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省察的な家族対話を支援するファミリー・ポートフォリオ

実証実験COMPANY

調査協力者と分析データ

子スマートフォンを所有している子育て期(子どもが乳幼児〜小学生)の家族20組(父20名,母20名,計40名)に,FP を1ヶ月間使用してもらった.父母のいずれか1台にFPをインストールし,代表して記録,週1回の新聞発行時には家族で閲覧するように依頼した.
FP使用の前後に質問紙調査を実施した.「親性」(大橋・浅野2010)と「記録頻度や記録に対する意識」について事前事後の変化を見るほか,事後ではFPの機能と活動に関する質問と要望の自由記述の欄を設けた.


事前・事後質問紙の結果

事前事後ともに回答のあった32名(父16名,母16名)を対象に対応のあるサンプルのt検定により,事前事後の比較を行った.大橋・浅野(2010)に基づき親性尺度について信頼性を見たところいずれも十分な値であったため,各項目を単純加算後平均化し,「親役割の状態」「子どもへの認識」「親役割以外の状態」の3つを親性尺度として分析を行った(表2).

「親役割以外」が有意(t(31)=2.322, p<.05)に上がり,「子どもへの認識」の向上にも有意傾向が見られた(t(31)=1.978, p<.10).なお,「子どもへの認識」のみ父母による差が見られ,母親と比べ父親の方が事後に子どもへの認識が有意に高まっていた.

ポートフォリオを記録するのは主に母親が行う家庭が多かったが,それらの記録を情報共有することにより,父親の「子どもへの認識」に影響したものと推察できる.「親役割」については,事前・事後ともに高いため(事前:4.23・事後:4.29),変化が見られなかったと考える.これらのことから,「親性」の向上はFPにより支援されたと考える.


記録に対する意識については,事後に「記録が取れている」ことへの実感が上がり(t(31)=-2.54, p<.05),子どもや家族の記録については,「子どもや家族の記録は,親子の対話のきっかけとなる」(t(31)=-2.97, p<.05)が事後に有意に上がっていた.「子どもや家族の記録は,家族の対話のきっかけとなる」(t(31)=-1.76, p<.10)の向上にも有意傾向が見られた(表3).FPは親子や家族間の対話を促していたといえる.



FPの機能と活動に関する事後質問紙の結果

各項目に対する5件法(1.まったく違う2.違う3.どちらともいえない 4.そのとおり 5. まったくそのとおり)の回答を肯定的な回答(4,5)と否定的な回答(1,2,3)に分けて二項検定を行った(表4).その結果,のこす・みる(p<.01),家族新聞(p<.001)の機能が,「子どもの成長を振り返ることができた」に対して有意に肯定的な回答が得られた(表4).

自由記述からは,「記録に残すことを意識したため,日常のいろんなことを気にかけるようになった.」や「普段は気付かないような子どもの成長に気付くことが出来た.」の他,「妻と子供が日常なにをしているのか,なんとなくわかりました.」「自分が一緒に感じたり,体験出来なかったことを,共有できたと思う」など,パートナーへの気づきが促される様子が見られた.



考察と今後の課題

以下の課題も挙げられる.機能と活動に関する質問項目では,自分自身に関する項目が低評価であった.父母各々でFPを使用できるようにし,自分に関する記録を行うよう支援,さらにそれらのデータを父母で共有していく方法も課題である.

自由記述では,コメント欄の文字数不足の指摘があった.インタフェースを含め,検討していきたい.また,新聞発行期間が1週間では短いという指摘と期間の設定希望があった.各家族のペースに合わせ,新聞発行期間や振り返りの頻度をカスタマイズできるよう検討したい.

バナースペース

研究代表

愛知淑徳大学 佐藤朝美